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そうそう、そうなんだよ、私たちの不安は <中野円佳『「育休世代」のジレンマ』(2014年、光文社)>

そうそう、そうなんだよ、私たちの不安は

お盆前半に、中野円佳さんの『「育休世代」のジレンマ』を読みました。

さっそくですが、引用から。

女子大生に聞くと、彼女たちの理想の出産年齢は28歳くらいだそうだ。卵子老化について広く知られるようになり、キャリアもそれなりに積んで、でも20代に産みたいという折衷案が28歳くらいらしい。

若い女性は、自分自身がその年齢で産めるのか、医療技術の進展が間に合うのか、早い段階から恐れおののくようになってしまったように見える。一方で、キャリア形成期と産み時が重なった場合に、実際に女性たちがどう対処しているのかについての実証研究は少ない。(P64)

一方で、総じて「授かりもの」という発言が頻出し、子どもがほしくてもできない夫婦を身近に知っていたなどで、妊娠を「いつでもできること」とは捉えておらず、先延ばしすることが産めなくなるリスクにつながるとの認識があるケースも多い(P71)

 

もうここに書いてあるもやもや・不安が、まさに自分の抱えていたことで。

最近気になって、もやもやしていたことを言語化してもらった!という気分。

 

この本は、

有名大学を出て就職活動も勝ち抜き、仕事をする気満々に見えた「バリキャリ」女性たちが、制度が整ってきたにもかかわらず、出産後に辞めてしまったり、育児重視にシフトし、仕事への熱意を失うように見えたりするのはなぜなのか、という問いに答えること (P4)

 とあるように、高学歴の女性のライフとキャリアのジレンマについて扱ったもの。

 

私も、

「おし、これから仕事ばんばんやっていこう、責任の増える仕事も増えていくだろうな」という時期と、「身体的な出産のベストタイミング」(私も夫も)が
時期的に重なってしまうとどうしようどうしよう、と思う。

とにかく、出産後の職場復帰を見据えてなんとか今自分の時間がたんまりある時期に
少しでもスキルアップしなくちゃ、と焦る。

この本で研究対象としているのが、高学歴で、かつ育児資源(親が近所に住んでいるなど)があまり豊富ではない人を対象にしているのも、私と近しい境遇で、より共感できる。

ただ会社選びや夫選びがうまいかどうかではない

そして、こういったジレンマは個々人の問題ではなくて、
そうさせている社会の構造があるんだよ、というところも納得感が高かった。

仕事を継続する、退社予備軍、退社 した人たちがなぜこういう選択肢を選んだのかどうかについても、きちんと要因分析がされていて、

  • ジェンダーの社会化経験
  • 会社選びの際の「女性の働きやすさ」を重視するかどうか
  • 入社後の職場環境
  • 夫への期待
  • 育児資源
  • 復帰後の職場環境

といった要因について、どういう選択肢を選んで、どういう結論に至ったのかが
まとまっています。

筆力が足りないので、ぜひそのあたりは本をじっくり読んでみてほしいです。

 

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

 

 

 

「グローバル人材」とかも

この本とは関係がないのだけれども、
よく聞く「グローバル人材」なんて言葉も、
問題は語学だけではなくて、異文化理解だけではなくて、
自分が日本を出るとなった場合の家(持ち家の処分)や家族の介護問題との兼ね合いなんかを扱っている論調は寡聞にして見たことがない。

キャリアは、どのような仕事を選ぶかだけではなくて、
取り巻く環境や体の変化なども踏まえて総合的に考えないと、きっと、うまくいかない。

日本の外へ出るのは(たくさん問題はあるんだけど)そこまで大きな問題ではなくて。

それよりも、何か家族に病気が見つかったりしたときに、すぐ行けないとか、そういうことが、ね。

誰か同じようなことを感じている人はいないのかなぁ。

 

同じ著者の方の新刊も出たらしい!

お盆はまだまだ読む本がたくさんあるので、お盆明けたら読んでみようと。